メソ対流系
メソ対流系とは
メソ対流系(MCS:Mesoscale Convective System)とは、対流雲(積乱雲)が組織化されて集団を形成し、個々の積乱雲よりも大きなスケールの気象現象となったもののことです。単独の積乱雲の寿命は1時間程度ですが、メソ対流系として組織化されると数時間から十数時間にわたって存続し、より大きな影響をもたらします。
メソ対流系にはいくつかの類型があります。積乱雲の組織化の程度や構造の違いによって、気団性雷雨(シングルセル型)、マルチセル型、スーパーセル型、そしてスコールラインや大規模なメソ対流複合体(MCC)などに分類されます。
気団性雷雨(シングルセル型)
気団性雷雨は、最も単純なタイプの雷雨です。夏の午後に夕立として経験するような雷雨がこれにあたります。1つの積乱雲(シングルセル)が発達期→成熟期→衰退期のライフサイクルを経て消滅するもので、持続時間は30分〜1時間程度です。
気団性雷雨は、大気の不安定(条件付き不安定など)によって発生しますが、鉛直方向の風のシア(風速や風向の高度変化)が弱い環境で発生することが特徴です。風のシアが弱いと、積乱雲の下降流が上昇流の領域を直接押しつぶすため、積乱雲は比較的短時間で衰退します。
気団性雷雨は一般的に被害は局所的で規模も小さいですが、雷やダウンバーストを伴うことがあるため注意が必要です。
マルチセル型雷雨
マルチセル型雷雨は、複数の積乱雲セルが組織的に配列し、次々と新しいセルが発生することで雷雨全体としての寿命が長くなるタイプの雷雨です。
マルチセル型雷雨では、成熟期の積乱雲の下降流によって地表面付近に冷たい空気の塊(冷気プール)が形成されます。この冷気プールの前端(ガストフロント)が、周囲の暖かく湿った空気を持ち上げる「トリガー」の役割を果たし、新しい積乱雲セルを発生させます。
古いセルが衰退する一方で、ガストフロント上に新しいセルが次々と発生するため、雷雨全体としては数時間にわたって持続します。衛星画像やレーダー画像で見ると、複数のセルが並んで集団を作っているように見えます。
マルチセル型は、鉛直方向の風のシアがある程度(弱〜中程度)存在する環境で発生しやすくなります。風のシアがあることで、下降流と上昇流が空間的に分離されるため、下降流が上昇流を直接抑制することが避けられ、セルの寿命が長くなるのです。
スーパーセル型雷雨
スーパーセル型雷雨は、最も組織化された危険な雷雨です。1つの巨大な積乱雲セル(スーパーセル)が数時間にわたって持続し、竜巻、巨大なひょう、激しい降雨、強風など極めて激しい気象現象をもたらします。
スーパーセル型の最大の特徴は、雲の内部にメソサイクロンと呼ばれる直径数km〜十数kmの回転する上昇流が存在することです。このメソサイクロンの存在によってスーパーセルは非常に安定した構造を維持します。
スーパーセルが形成されるためには、鉛直方向の風のシアが非常に大きい環境が必要です。強い風のシアによって上昇流と下降流が完全に分離され、雲全体に回転が与えられてメソサイクロンが形成されます。上昇流と下降流が分離しているため、下降流が上昇流を抑制することがなく、1つのセルが数時間にわたって維持されるのです。
スーパーセルから竜巻が発生することがあります。メソサイクロンの回転が収束によって強化され、地上まで伸びた回転の渦が竜巻として観測されます。
雷の発生メカニズム
積乱雲やメソ対流系に伴う重要な現象として雷(かみなり)があります。雷は、雲の内部や雲と地面の間で大量の電荷が瞬間的に放電される現象です。
積乱雲の内部では、氷の粒子やあられ、雪片、水滴などのさまざまな降水粒子が活発な上昇流と下降流の中で激しく衝突し合っています。この衝突の過程で電荷の分離が起こります。
一般的に、積乱雲の上部には正の電荷が集まり、中〜下部には負の電荷が集まります。この電荷の分離は、あられ(氷の粒)と氷晶(小さな氷の結晶)の衝突によって主に起こると考えられています。衝突の際、温度が高い場合はあられが正に、氷晶が負に帯電し、温度が低い場合はその逆になります。雲の中〜下部の温度の高い領域ではあられが正に帯電しますが、あられは重いため下部にとどまり、軽い氷晶は上昇流で上部に運ばれます。結果として雲の上部に正、下部に負の電荷が蓄積されるのです。
正の電荷と負の電荷の差が十分に大きくなると、空気の絶縁を破って放電が起こります。これが雷です。雲の中での放電を雲放電(雲内放電や雲間放電)、雲と地面の間の放電を対地放電(落雷)といいます。
