仮温度
乾燥空気と湿潤空気の分子量
気象学では、水蒸気を含まない空気を乾燥空気、水蒸気を含む空気を湿潤空気と呼びます。
乾燥空気は主に窒素(N₂、約80%)と酸素(O₂、約20%)からできています。それぞれの分子量は窒素が28、酸素が32なので、乾燥空気の平均分子量は約29になります。
一方、水蒸気(H₂O)の分子量は18です。これは乾燥空気の平均分子量(約29)よりも小さい値です。
平均分子量29の乾燥空気に、分子量18の水蒸気が加わると、全体の平均分子量は29より小さくなります。分子量が小さいということは、同じ温度・気圧であれば密度が小さい(軽い)ことを意味します。
つまり、湿潤空気は乾燥空気よりも軽いのです。湿気を含む空気の方が重そうなイメージがありますが、実際は逆です。
仮温度とは
仮温度(記号:Tv、英語:virtual temperature)とは、ある湿潤空気と同じ密度を、水蒸気を含まない乾燥空気でつくるために必要な温度のことです。
湿潤空気は水蒸気を含むぶん密度が小さい(軽い)ので、乾燥空気で同じ軽さを再現するには、気温を少し上げて密度を下げる必要があります。この「少し上げた気温」が仮温度です。
仮温度は実際の気温(T)と混合比(w)を使って次のように定義されます。
Tv = (1 + 0.61w) × T
水蒸気が多いほど(wが大きいほど)仮温度は実際の気温より高くなります。つまり、仮温度が高いということは、その空気に多くの水蒸気が含まれていることを意味します。
仮温度の便利さ
乾燥空気に対して導かれた方程式(たとえば状態方程式)に仮温度を代入すると、その式をそのまま湿潤空気にも使えるようになります。これが仮温度を導入する最大のメリットです。
ジオポテンシャル高度
ジオポテンシャル高度とは、ある高度の位置エネルギーを重力加速度で割ったものです。実用上はふつうの「高度」と同じ意味と考えて問題ありません。ジオポテンシャル高度が高い=高度が高い、低い=高度が低い、ということです。
比容
比容(記号:α、単位:m³/kg)とは、物質1kgあたりの体積のことです。比容が大きいほど、その物質の体積が大きいことを表しています。
比容と密度(ρ)には次の関係があります。
α × ρ = 1
→ α = 1/ρ
つまり、比容は密度の逆数です。密度が大きい(重い)物質は比容が小さく、密度が小さい(軽い)物質は比容が大きくなります。
湿ったフェーンと乾いたフェーン
以前学んだフェーン現象には、実は2つの種類があります。
湿ったフェーン
山の風上側で空気が上昇して雲を発生させ、降水をともなうフェーン現象を湿ったフェーンと呼びます。これは以前「フェーン現象」のセクションで学んだものです。風上側では湿潤断熱変化(100mにつき約0.5℃低下)、風下側では乾燥断熱変化(100mにつき1℃上昇)となるため、風下側で大きく気温が上がります。
乾いたフェーン
雲や降水をともなわないフェーン現象を乾いたフェーンと呼びます。
たとえば、標高1000mの山の風上側の麓に20℃の空気があり、山頂付近を15℃の風が吹いているとします。この山頂の乾いた空気が山の風下側を下降すると、乾燥断熱変化で100mにつき1℃気温が上昇するため、麓に着いたときには15+10=25℃になります。風上側の麓は20℃なので、風下側の方が5℃高くなります。
乾いたフェーンは、風上側の麓の空気ではなく、上空の乾いた空気が山を越えて下降してくることで起きる現象です。
