渦度

渦度とは

渦度(うずど)とは、空気の回転の度合いを数値で表したものです。大気中の空気がどのくらい回転しているかを定量的に示す量であり、大気の運動を理解するうえで非常に重要な概念です。英語ではvorticity(ボルティシティ)といいます。

渦度は回転の向きによって正負の符号がつきます。北半球では反時計回り(低気圧性回転)の渦度を正の渦度、時計回り(高気圧性回転)の渦度を負の渦度とします。南半球ではこの関係が逆になります。

渦度の2つの要素:曲率と風速シア

渦度には2つの要素が含まれています。曲率による渦度と風速シア(風速の水平方向の変化)による渦度です。

曲率による渦度とは、風が曲がって流れているときに生じる渦度です。北半球で風が反時計回りに曲がっていれば正の渦度、時計回りに曲がっていれば負の渦度です。低気圧のまわりのように反時計回りに風が吹いている場合は正の渦度、高気圧のまわりのように時計回りに風が吹いている場合は負の渦度になります。

風速シアによる渦度とは、風の速さが場所によって異なるときに生じる渦度です。たとえば、西風が南側ほど強く北側ほど弱い場合を考えてみましょう。このとき、空気の塊は南側がより速く東に運ばれ、北側がより遅く運ばれるため、全体として反時計回りにねじれる効果が生まれます。これが正の渦度を生み出します。

実際の大気中の渦度は、曲率による渦度と風速シアによる渦度の両方を合わせたものになります。

相対渦度と地球渦度

大気中の渦度は、相対渦度地球渦度に分けて考えることができます。

相対渦度(ζ:ゼータ)とは、地球の表面に対する空気の回転の渦度のことです。風が吹くことによって生じる渦度であり、風の曲率や風速シアによって決まります。天気図上で観測される低気圧や高気圧の渦はこの相対渦度に対応しています。

地球渦度(f:コリオリパラメータ)とは、地球の自転そのものによる渦度のことです。地球が自転しているということは、地球の表面のあらゆるものが回転しているということです。この回転の渦度が地球渦度であり、その値はコリオリパラメータ(f=2Ωsinφ)に等しくなります。

地球渦度は緯度によって変化します。北極ではf=2Ω(最大)、赤道ではf=0、南極ではf=−2Ωとなります。北半球ではfは常に正(反時計回り)であり、南半球では常に負(時計回り)です。

なぜ地球が自転していると渦度が生じるのでしょうか。北極点の真上から地球を見下ろしてみると、地球は反時計回りに回転しています。つまり、北極点にいる人は24時間で1回転、反時計回りに回っていることになります。これが地球渦度です。赤道では、地表面の回転を真上から見ると回転しているようには見えないため(横回転はしていますが鉛直軸まわりの回転がない)、地球渦度は0になります。

絶対渦度

絶対渦度とは、相対渦度と地球渦度を足し合わせたもので、宇宙から見た空気の「真の」回転を表します。

絶対渦度 = 相対渦度(ζ)+ 地球渦度(f)

絶対渦度は大気の運動を解析するうえで重要な量です。特に、渦度の保存則(後のセクションで学ぶ渦位の保存など)を考えるときには、相対渦度だけでなく絶対渦度を使う必要があります。

たとえば、上空を流れる偏西風の波動(ロスビー波)の振る舞いを理解するには、絶対渦度の保存を考えることが鍵になります。空気塊が南北に移動すると地球渦度(f)が変化するため、それを補うように相対渦度(ζ)も変化します。これが偏西風の蛇行を引き起こすメカニズムの1つです。

渦度の式

相対渦度は数式で次のように表されます。

ζ = ΔV/Δx − ΔU/Δy

ここで、U は東西方向の風速成分、V は南北方向の風速成分、x は東向きの距離、y は北向きの距離です。

この式は収束・発散の式(D=ΔU/Δx+ΔV/Δy)と似ていますが、符号が異なることに注意してください。収束・発散が空気の「集まり具合・広がり具合」を表すのに対し、渦度は空気の「回転の度合い」を表しています。

この式のΔV/Δx は、東に行くほど南北方向の風速がどう変わるかを表し、ΔU/Δy は北に行くほど東西方向の風速がどう変わるかを表しています。この2つの項の差が渦度になるのです。

強風軸と渦度

ジェット気流のような強い西風の帯がある場合、その強風軸(風速が最大となるライン)の南側と北側では渦度の符号が異なります。

強風軸では風速が最大であり、強風軸の南側に向かうと風速が弱くなり、北側に向かっても風速が弱くなります。西風が吹いている場合、強風軸の南側では北に向かうほど風速が増加します(ΔU/Δy>0)。渦度の式ζ=ΔV/Δx−ΔU/ΔyにおいてΔU/Δyが正であれば渦度の値は小さくなる(負の方向に寄る)ため、強風軸の南側は負の渦度(高気圧性渦度)が卓越します。

一方、強風軸の北側では北に向かうほど風速が減少します(ΔU/Δy<0)。ΔU/Δyが負であれば渦度の値は大きくなる(正の方向に寄る)ため、強風軸の北側は正の渦度(低気圧性渦度)が卓越します。

このように、ジェット気流の強風軸をはさんで北側に正の渦度、南側に負の渦度が分布しているということは、天気図の解析において非常に重要な知識です。

角運動量保存則

渦度を理解するために、角運動量保存則について触れておきます。角運動量とは、回転している物体の「回転の勢い」を表す物理量です。外からの力(トルク)がはたらかなければ、角運動量は保存されます。

身近な例として、フィギュアスケーターのスピンを考えてみましょう。腕を広げてゆっくり回転しているスケーターが腕を体に引き寄せると、回転が急に速くなります。これは角運動量が保存されているからです。腕を引き寄せることで回転の半径が小さくなった分、回転速度が増したのです。

大気中でも同じことが起きます。空気の塊が水平方向に収縮する(水平収束する)と、回転の半径が小さくなるため、角運動量保存則によって渦度が増加します。逆に、空気の塊が水平方向に広がる(水平発散する)と、回転の半径が大きくなるため渦度は減少します。

収束・発散と渦度の関係

角運動量保存則から導かれるように、収束・発散と渦度には密接な関係があります。

**水平収束が起きると渦度が増加します。**空気が集まって水平方向に収縮すると、スケーターが腕を引き寄せるのと同じ原理で、回転が速くなります。つまり、北半球では正の渦度(反時計回りの回転)が強まります。低気圧が発達するとき、下層の収束によって渦度が増加し、回転がどんどん強くなっていくのはこのためです。

**水平発散が起きると渦度が減少します。**空気が広がって水平方向に引き延ばされると、回転が遅くなります。高気圧の領域で時計回りの回転(負の渦度)が維持されるのは、高気圧の下層で発散が起きていることと関係しています。

気圧の谷(トラフ)と気圧の尾根(リッジ)における渦度

上空の偏西風は南北に蛇行しながら吹いています。この蛇行のうち、南側に凹んだ部分を気圧の谷(トラフ)、北側に膨らんだ部分を**気圧の尾根(リッジ)**と呼ぶことは天気図のセクションで学びました。

トラフでは等高度線が反時計回りに曲がっているため、正の渦度(低気圧性渦度)が大きくなります。トラフの渦度が最も大きくなるのはトラフの軸(最も南に凹んだ部分)付近です。

リッジでは等高度線が時計回りに曲がっているため、負の渦度(高気圧性渦度)が大きくなります。リッジの渦度が最も小さく(負の値が最大に)なるのはリッジの軸(最も北に膨らんだ部分)付近です。

偏西風の蛇行において、トラフからリッジに向かう部分(トラフの東側)では正の渦度が減少していく領域であり、リッジからトラフに向かう部分(トラフの西側)では正の渦度が増加していく領域です。この渦度の変化は上層の発散・収束と関連しており、地上の天気に大きな影響を与えます。

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