暖かい雨と冷たい雨
天気予報で「暖かい雨」「冷たい雨」という言葉を聞くことがありますが、これは降水メカニズムの違いを表しています。
暖かい雨
暖かい雨とは、雲の中の温度がどこも0℃以上のときに、水滴が成長して落下してきたものです。雲の中に氷晶は存在せず、水滴のみで構成されています。熱帯地方のスコールが代表例です。
暖かい雨の成長過程
暖かい雨は2つの段階を経て成長します。
1. 凝結過程(拡散過程): 空気が過飽和の状態になると、凝結核(エアロゾル)のまわりに水蒸気が凝結して小さな水滴ができます。さらに周囲の水蒸気が凝結を続けて、半径約0.01mm(10μm)の雲粒にまで成長します。
ただし、凝結過程だけで雲粒が雨粒にまで成長するには2〜3日もかかる計算になります。実際には夏の夕立のように数時間で雨が降ることもあるため、凝結過程だけでは説明がつきません。
2. 併合過程: 雲粒がある程度の大きさになると落下し始めます。大きな水滴は落下速度が大きく、小さな水滴は落下速度が小さいため、大きな水滴が小さな水滴に追いついて吸収(併合)していきます。吸収するとさらに大きくなって落下速度も増すため、次々と小さな水滴を取り込んで加速度的に成長します。このようにして半径約1mm以上の雨粒にまで成長します。
なお、併合が繰り返されるためには、雲自体にある程度の厚みが必要です。
まとめると:
| 段階 | 過程 | 内容 |
|---|---|---|
| 雲粒まで | 凝結過程 | 凝結核に水蒸気が凝結して成長 |
| 雨粒まで | 併合過程 | 大きな水滴が小さな水滴を吸収して成長 |
雨粒の大きさの限界
雨粒はいくらでも大きくなれるわけではありません。十分大きく成長した水滴は、落下中に空気抵抗を受けて形が変わり、やがて分裂して小さくなります。このため、直径が約8mmを超えるような雨粒は地上では観測されません。
終端速度
雨粒は重力に引かれて落下しますが、落下速度が増すにつれて空気抵抗も増していきます。やがて下向きの重力と上向きの空気抵抗がつり合い、落下速度が一定になります。この一定になった速度を終端速度といいます。
終端速度は次の式で求められます。
mg = 6πrηV
(m:水滴の質量、g:重力加速度、r:水滴の半径、η:空気の粘性係数、V:落下速度)
この式を変形すると、終端速度Vは次のようになります。
V = 2r²ρg / 9η
(ρ:水滴の密度)
この式から、終端速度は水滴の半径の2乗に比例することがわかります。つまり、半径が2倍になれば終端速度は4倍になります。大きな水滴ほど速く落下するという性質が、併合過程の基盤になっています。
冷たい雨
冷たい雨とは、雲の中の氷晶(凍った雲粒)が成長して落下し、途中で溶けて雨になったものです。溶けなければ雪として降ります。日本を含む中・高緯度で降る雨のほとんどはこの冷たい雨です。
冷たい雨の成長過程は暖かい雨より複雑で、3つの過程があります。
1. 昇華凝結過程
雲の中の温度が−20〜−10℃程度のとき、過冷却水滴と氷晶が同じ空間に共存しています。このとき、過冷却水滴が蒸発し、その水蒸気が氷晶の表面に昇華凝結することで、氷晶だけが成長します。
なぜこのようなことが起きるかというと、水と氷では飽和水蒸気量が異なるからです。同じ温度で比べると、水に対する飽和水蒸気量の方が氷に対する飽和水蒸気量よりも大きくなります。
| 温度 | 水に対する飽和水蒸気量 | 氷に対する飽和水蒸気量 |
|---|---|---|
| −5℃ | 3.4 g/m³ | 3.3 g/m³ |
| −10℃ | 2.4 g/m³ | 2.1 g/m³ |
| −15℃ | 1.6 g/m³ | 1.4 g/m³ |
| −20℃ | 1.1 g/m³ | 0.9 g/m³ |
氷晶に対しては飽和(またはそれ以上)でも、過冷却水滴に対してはまだ飽和に達していない状態が起きます。この場合、過冷却水滴は蒸発して水蒸気を供給し、その水蒸気が氷晶に凝結するため、氷晶のみが成長するのです。
2. ライミング
過冷却水滴が氷晶に衝突して、氷晶の表面に凍りつく成長過程をライミングといいます。
ライミングで多数の過冷却水滴が凍りつき、直径が5mm未満の氷の粒になったものをあられといいます。さらに成長して直径が5mm以上になるとひょうと呼ばれます。
ひょうは発達した積乱雲の中で発生します。積乱雲内の強い上昇気流であられが吹き上げられ、再び落下し、また吹き上げられることを繰り返すうちに、表面に過冷却水滴が次々と凍りつき、やがてひょうにまで成長します。積乱雲が多く発達する夏に多くなりますが、真夏は地上付近の気温が高すぎて溶けてしまうため、初夏の頃に最も多く見られます。
3. 凝集過程
成長した氷晶がある程度の大きさになると落下し始めます。落下速度の大きな氷晶が、落下速度の小さな氷晶に衝突して付着し、さらに大きく成長する過程を凝集過程といいます。
付着する確率は温度が高くなるにつれて増していき、−5℃以上になると特に付着しやすくなります。凝集過程により、比較的大きな雪片(ぼたん雪)ができます。
雪が溶けるかどうかは温度と湿度しだい
氷晶が落下の途中で溶ければ雨、溶けなければ雪になります。雪が溶けるかどうかは気温だけでなく、湿度も関係しています。
相対湿度が100%に近いときは0〜2℃くらいが雨雪の境目ですが、湿度が50〜60%と低い場合には4〜5℃でも雪が溶けずに地上に達することがあります。また、雨と雪が混ざって降るものをみぞれ、溶けかけの雪もみぞれといいます。
