対流不安定
対流不安定とは
対流不安定とは、もともとは比較的安定している層でも、その層全体が持ち上げられると不安定に変わってしまう成層状態のことです。ポテンシャル不安定とも呼ばれます。
対流不安定かどうかは相当温位(θe)の鉛直分布で判断できます。上層ほど相当温位が低くなっている(上が寒冷・乾燥、下が温暖・湿潤)場合、その成層は対流不安定です。
なぜ安定な層が不安定になるのか
具体例で考えてみます。地上(0m)に30℃、上空1kmに25℃の空気があるとします。2地点間の温度差は5℃で、この層は比較的安定だとします。
この層全体を1kmずつ持ち上げるとどうなるでしょうか。
下層の空気(地上→1km): 下層は相当温位が高い(温暖・湿潤)ため、空気がよく湿っています。上昇すると雲をつくりながら湿潤断熱変化をするので、温度は100mにつき約0.5℃の割合で下がります。1km上昇すると5℃下がって、**25℃**になります。
上層の空気(1km→2km): 上層は相当温位が低い(寒冷・乾燥)ため、空気が乾いています。上昇しても雲をつくらず乾燥断熱変化をするので、温度は100mにつき約1℃の割合で下がります。1km上昇すると10℃下がって、**15℃**になります。
上昇後の温度差は25−15=**10℃**となり、上昇前の5℃よりも大きくなりました。温度差が大きくなったということは、安定度が悪化したということです。
このように、飽和していなければ安定であるのに、層全体が上昇して飽和に達したときに内在していた不安定が顕在化して、対流雲が発達するのが対流不安定の本質です。
対流不安定が起きやすい場面
対流不安定になると、対流雲が集団的に発生・発達します。梅雨期に豪雨が降るようなときの大気は、一般的にこの対流不安定な状態にあります。
季節でいうと、夏は南から相当温位の高い空気(温暖・湿潤)が下層に流入しやすいため、上層との相当温位の差が大きくなり、対流不安定になりやすくなります。
安定・不安定・中立の表現
空気塊がある高さまで上昇したとき、その空気塊と周囲の大気の温度関係で3つの状態に分けられます。
| 状態 | 空気塊と周囲の温度関係 | 空気塊の動き |
|---|---|---|
| 不安定 | 空気塊の方が周囲より暖かい | 浮力を受けてさらに上昇を続ける |
| 安定 | 空気塊の方が周囲より冷たい | 負の浮力を受けて元の位置に戻ろうとする |
| 中立 | 空気塊と周囲が同じ温度 | 上昇も下降もせず静止する |
空気塊が上昇する4つの理由
実際の大気で空気塊が上昇するきっかけには、主に4つのパターンがあります。
1. 下層収束: 下層で空気が集まる(収束する)と、それより下の地表面には逃げ場がないため、空気は上昇するしかありません。
2. 地形: 空気が山にぶつかると、山の斜面に沿って強制的に上昇します。南風が山の南側斜面に当たって空気が持ち上げられるのが典型例です。
3. 日射による対流: 日射で地上付近の空気が暖められると、その空気は密度が小さくなって軽くなり、上昇流(対流)が発生します。
4. 前線: 暖気と寒気がぶつかる境目が前線です。暖気は寒気より軽いため、前線付近では暖気が寒気の上に乗り上げる形で上昇します。
