コリオリ力(転向力)
コリオリ力とは
もし地球が自転していなければ、風は気圧傾度力だけに従って、高気圧から低気圧に向かってまっすぐ吹くはずです。しかし実際には、地球は自転しているため、地球上で動いている物体(空気も含む)には進行方向を曲げる見かけの力がはたらきます。この力をコリオリ力(コリオリの力)といいます。日本語では転向力とも呼ばれます。
なぜ「見かけの力」と呼ぶかというと、コリオリ力は地球と一緒に回転している観測者から見たときにだけ現れる力だからです。地球の外から見れば、空気はまっすぐ進んでいるのに、自転する地球の上にいる私たちから見ると、空気が曲がっていくように見えるのです。
身近な例で考えてみましょう。回転している円盤の中心から外側に向かってボールを転がすと、円盤の上に乗っている人から見ると、ボールはまっすぐ進まずに曲がっていくように見えます。しかし、円盤の外から見ている人にはボールはまっすぐ転がっています。地球の自転とコリオリ力の関係もこれと同じ原理です。
コリオリ力の性質
コリオリ力にはいくつかの重要な性質があります。
1. 北半球では進行方向の右側に、南半球では左側にはたらく
北半球では、運動している物体の進行方向に対して右側に曲げる方向に力がはたらきます。たとえば北に向かって進んでいる空気は右(東)に曲げられ、東に向かって進んでいる空気は右(南)に曲げられます。南半球ではこの逆で、進行方向の左側に曲げられます。
2. 運動している物体にのみはたらく
コリオリ力は静止している物体にははたらきません。風が吹いていなければコリオリ力もゼロです。そして、物体の速度が速いほどコリオリ力は大きくなります。
3. 風速を変えない
コリオリ力は常に進行方向に対して直角にはたらきます。物体を加速させたり減速させたりする力は進行方向と同じ向きまたは逆向きの力ですから、直角にはたらくコリオリ力は物体の速さそのものを変えることはありません。コリオリ力は風の向きだけを変え、風速は変えないのです。
4. 緯度によって大きさが異なる
コリオリ力は赤道で最も小さく(ゼロ)、極で最も大きくなります。赤道上では自転軸に対して水平方向の回転成分がないためコリオリ力がはたらかず、極では回転成分が最大になるためコリオリ力も最大になります。
コリオリパラメータ
コリオリ力の大きさを表す式は次のとおりです。
コリオリ力 = 2Ωsinφ × V = f × V
(Ω:地球の自転角速度、φ:緯度、V:風速)
ここで「2Ωsinφ」の部分をコリオリパラメータ(記号:f)と呼びます。
f = 2Ωsinφ
コリオリパラメータは緯度によって決まる値です。sinφは赤道(φ=0°)でゼロ、極(φ=90°)で1ですから、コリオリパラメータは赤道で最小(ゼロ)、極で最大になります。これがコリオリ力の緯度依存性の正体です。
地球の自転角速度Ωは約7.29×10⁻⁵ rad/sです。この値は地球が1日(約24時間)で1回転(2πラジアン)することから求められます。
緯度別にコリオリ力を計算する
ここで実際に緯度を代入して、コリオリパラメータの大きさを見ていきましょう。北半球を例にして北緯を代入します。
まず、北極というのは緯度でいうと北緯90度ということになります。この北緯90度をコリオリパラメータのφのところに代入すると、2Ωsin90°(sin90°=1)となるので、計算すると2Ω×1=2Ωとなります。
次に、北半球の中緯度の中でも北緯30度(九州の南海上付近)でのコリオリパラメータは、2Ωsin30°(sin30°=1/2)となるので、計算すると2Ω×1/2=Ωになります。
最後に、赤道(緯度0度)でのコリオリパラメータは、2Ωsin0°(sin0°=0)となるので、計算すると2Ω×0=0となります。
このように、緯度によってコリオリパラメータの大きさは異なるものであり、北半球でいうと北極で最大(2Ω)、赤道で最小(0)となります。
コリオリ力と風速の関係
コリオリ力の式を見ると、コリオリ力は風速Vに比例しています。つまり、風速が大きくなるほどコリオリ力も大きくなり、逆に風速が小さくなるほどコリオリ力も小さくはたらきます。風速が0の場合、つまり空気が動いていない状態ではコリオリ力も0となり、まったくはたらかないのです。
同じように、今度はコリオリ力の記号の中でコリオリパラメータを一定にしてみましょう。コリオリパラメータは緯度で値が変化するので、言い換えると緯度を一定にするということになります。そうすると、コリオリ力は風速に比例します。つまり、風速が大きくなるほどコリオリ力も大きくはたらきます。
これは気圧傾度力との大きな違いです。気圧傾度力は気圧差がある限り常にはたらきますが、コリオリ力は物体が動いていなければはたらきません。風が吹き始めるきっかけを与えるのは気圧傾度力であり、吹き始めた風の向きを曲げるのがコリオリ力であるといえます。
コリオリ力は空気塊の質量に比例する
コリオリ力には、風の進行方向を変えるはたらきはあるのですが、速度を変えるはたらきはありません。また、このコリオリ力は風だけでなく地球上で運動するすべての物体にはたらくものなのですが、私たちが日常生活で体験するような運動、たとえばボールを投げたりするような運動に対しては、スケール(規模)が小さいのでほとんどはたらかず、大きなスケール、たとえば風でいうと天気図にのるような大きな風などに対してはたらく性質があります。
また、コリオリ力は空気塊の質量に比例して大きくなる性質もあります。つまり空気塊の質量が大きくなるほどコリオリ力も大きくはたらくということです。一般的にこのコリオリ力は単位質量、つまり1kgあたりの空気塊に働くものです。
