温位
温位とは
温位(記号:θ、単位:K)とは、ある高さにある空気を1000hPaの高さまで乾燥断熱変化させたときの温度を、絶対温度(K)で表したものです。
温位の求め方は2ステップです。
- その空気を1000hPaまで乾燥断熱変化させて、そのときの温度(℃)を求める
- その温度を絶対温度(K)に変換する(摂氏+273)
具体例
上空1km(気圧が1000hPaより低い場所)に20℃の空気があるとします。この空気を1000hPa(地上相当)まで乾燥断熱変化で下降させると、100mにつき1℃気温が上がるので、1km分で10℃上昇し、30℃になります。これを絶対温度に直すと、30+273=303K。これがこの空気の温位です。
温位で何がわかるのか
温位の目的は、大気の安定度を判断することです。
前のセクションで、安定・不安定を判断するには「同じ高さで温度を比べる」必要があると学びました。温位はすべての空気を1000hPaという共通の基準に揃えた温度ですから、温位の数値を直接比較するだけで、同じ高さでの温度比較ができたことになります。
シンプルに言えば、温位が高い=暖かい空気、温位が低い=冷たい空気です。
したがって:
- 上層の温位が高く、下層の温位が低い → 安定(暖かい空気が上、冷たい空気が下)
- 上層の温位が低く、下層の温位が高い → 不安定(冷たい空気が上、暖かい空気が下)
実際の大気では、一般に上空ほど温位が高くなっています。上層に寒気が流入したり、下層に暖気が入ったりして温位の分布が変わると、安定度も変化します。
温位は保存量
乾燥断熱変化では、温位の値は変化しません。これを「温位が保存される」といいます。
たとえば、地上(1000hPa)で30℃の空気の温位は303Kです。この空気を乾燥断熱変化で上空1kmまで上昇させると、気温は20℃に下がりますが、温位を計算し直しても303Kのままです。温位の定義は「1000hPaまで乾燥断熱変化で戻したときの温度」なので、上昇前の元の温度に戻るのは当然のことなのです。
相当温位
相当温位(記号:θe、単位:K)は、温位に水蒸気がすべて凝結したときに放出される潜熱を加えたものです。
相当温位(θe)= 温位(θ)+ 水蒸気の潜熱
近似的には次の式で求められます。
θe = θ + 2.8w
(w:混合比、単位はg/kg)
たとえば、温位が300Kで混合比が10g/kgの空気であれば、相当温位は300+2.8×10=328Kとなります。
相当温位でわかること
相当温位は「温位(=温度の情報)+水蒸気の潜熱(=水蒸気量の情報)」ですから、空気の温度と湿り具合の両方を反映した指標です。
- 相当温位が高い → その空気は暖かくて湿っている(温暖・湿潤)
- 相当温位が低い → その空気は冷たくて乾いている(寒冷・乾燥)
目安として、相当温位が318K以上で高温多湿な空気、336K以上で大雨をもたらすような空気とされています。
相当温位の保存性
- 乾燥断熱変化のとき → 温位も水蒸気の量も変わらないので、相当温位は保存される
- 湿潤断熱変化のとき → 温位は上昇するが、凝結で水蒸気が減って潜熱が減る。この2つが打ち消し合うため、相当温位は保存される
つまり相当温位は、乾燥断熱変化でも湿潤断熱変化でも保存されるという便利な性質を持っています。
一方、温位は湿潤断熱変化では保存されません。湿潤断熱変化で空気を上昇させると、温度低下の割合(100mにつき約0.5℃)よりも、温位を求める際の乾燥断熱変化での温度上昇の割合(100mにつき1℃)の方が大きいため、1000hPaに戻したときの温度が元より高くなってしまうからです。
湿球温位
湿球温位(記号:θw)は、空気を上昇させて飽和(=雲ができる高さ)に達した後、そこから1000hPaまで湿潤断熱変化で下降させたときの温度です。
未飽和の空気を上昇させると、最初は乾燥断熱変化(100mにつき1℃低下)で温度が下がり、ある高さで飽和に達します。そこからさらに上昇させると、雲を作りながら湿潤断熱変化(100mにつき約0.5℃低下)になります。この飽和した高さから1000hPaまで湿潤断熱変化で戻した温度が湿球温位です。
