気圧傾度力

気圧傾度とは

まず「気圧傾度」という言葉から確認しましょう。気圧傾度とは、2地点間の気圧変化の割合のことです。簡単にいうと、ある距離の中で気圧がどれだけ変化しているかを数値で表したものです。

記号で書くと、ΔP/Δn(ΔP:気圧差、Δn:距離)となります。たとえば等圧線が引かれていて、1000hPaの地点と1020hPaの地点の距離が500kmだったとすると、気圧傾度は20hPa÷500km=0.04hPa/kmとなります。つまり、1kmあたり0.04hPaの割合で気圧が変化しているということです。

気圧傾度を求めるときは、必ず等圧線に直角に交わるように距離をとり、その間の気圧差をその距離で割ります。

これは地上天気図での話ですが、高層天気図では高度差が気圧差のような役割を果たしています。高層天気図(等圧面天気図)では等高線が引かれていますから、2地点間の高度変化の割合が高層天気図上での気圧傾度を表していることになります。この場合も必ず等高線に直角に交わる距離をとり、その間の高度差をその距離で割ることで求めます。

なお、気圧傾度と似た言葉に温度傾度があります。温度傾度とは2地点間の温度変化の割合のことで、記号ではΔT/Δn(ΔT:温度差、Δn:距離)と表します。たとえば等温線が引かれていて、3℃の等温線を通る地点と9℃の等温線を通る地点の距離を等温線に直角に交わるように取ったとき500kmだったとすると、温度傾度は6℃÷500km=0.012℃/kmとなります。つまり、1kmあたり0.012℃の割合で温度が変化しているということです。

気圧傾度力とは

物体を動かすときには、必ず何らかの「力」が必要です。自動車はエンジンが力を加えて動かすものですし、ペンやコップなどは私たち人間が直接力を加えて動かすものです。そして空気の場合は、気圧の差によって生じる気圧傾度力という力がはたらくことにより動くもので、風が吹く理由となります。このようなことから、気圧傾度力を風の原動力といいます。

気圧傾度力には、水平方向の気圧傾度力と鉛直方向の気圧傾度力がありますが、ここでお話ししているのは水平方向の気圧傾度力です。鉛直方向の気圧傾度力については、第3章の静水圧平衡のところですでに学んでいます。一般的に「気圧傾度力」というと水平方向の気圧傾度力を指します。

気圧傾度力を記号で表すと次のようになります。

気圧傾度力 = −(1/ρ) × (ΔP/Δn)
(ρ:空気の密度 ΔP:気圧差 Δn:距離)

気圧傾度力は、気圧の高い側から低い側に空気塊を動かす力のことなので、気圧の低下する方向にはたらきます。記号の頭にマイナス(−)の符号がついているのは、気圧傾度力が気圧の低下する方向にはたらくため、つまり気圧がどれだけ低下する方向にはたらくのか、という意味によるものです。

気圧傾度と気圧傾度力の違い

気圧傾度と気圧傾度力は言葉こそ似ていますが、意味するところは違います。

気圧傾度力の記号の中にはΔP/Δnが含まれています。これは気圧傾度を表す記号ですから、気圧傾度力は気圧傾度が大きくなればなるほど、同じように大きくなります。

では、どのようなときに気圧傾度が大きくなるのでしょうか。気圧傾度の分子は気圧差(ΔP)、分母は距離(Δn)ですから、①距離が一定なら気圧差が大きくなるほど気圧傾度は大きくなり、②気圧差が一定なら距離が短くなるほど気圧傾度は大きくなります。また、①と②の考え方を足すと、③距離が短く、さらにその距離間の気圧差が大きいほど気圧傾度は大きいことになります。

このように、気圧傾度が大きくなるほど気圧傾度力も大きくなるわけですが、これをいい換えると、気圧傾度がない状態、つまり2地点間の気圧変化の割合がない場合、気圧差がない状態のときは気圧傾度力もはたらかないということになります。

地上天気図には等圧線が引かれていますので、その等圧線の混み具合を見れば水平方向に見た気圧傾度の大小がわかります。たとえば等圧線が混んでいるようなところは、そこで気圧が急激に変化する、つまり気圧変化の割合が大きいことになるので、気圧傾度が大きく、気圧傾度力も大きくなるので、風が強く吹きます。

台風の風がなぜあれほど強いかというと、台風の中心が黒くなるほど等圧線が混んでいる状態であり、気圧傾度力がものすごく大きいからなのです。

それとは逆に、等圧線がそれほど混んでいないようなところでは、気圧がそれほど変化しない、つまり気圧変化の割合が小さいことになるので、気圧傾度が小さく、気圧傾度力も小さくなるので、風はそれほど強く吹かないのです。高気圧に広く覆われると比較的風も弱くなるものですが、その理由は高気圧付近では等圧線がそれほど混んでいないため、気圧傾度力という風の原動力そのものが小さいからです。

また、気圧傾度力の記号の分母に空気の密度(ρ)が含まれていますから、分数の性質として分母が大きくなるほど全体の値は小さくなるように、空気の密度が大きくなるほど気圧傾度力は小さくなります。

気圧の単位について

気圧の単位は一般的にはhPa(ヘクトパスカル)やPa(パスカル)を用いていますが、ここではN(ニュートン)という単位を使って表す力について少し触れておきます。

気圧は単位面積(1m²)あたりに働く1Nの力が作用する圧力と表すことができます。記号で表すと、気圧=N/m²となり、1Pa=1N/m²に等しいです。

ここで1Nは質量1kgの物体に1m/s²の加速度を与える力の大きさのことで、N=kg・m/s²と表すことができます。

アプリの紹介

過去問を一文一問形式で解けるアプリを開発しました。

気象予報士試験対策

気象予報士試験対策

気象予報士試験対策アプリです。少しでも効率的に勉強したいなら是非お試しください。効率化のために一問一答形式に変えてます。また、問題文や解説の読み上げ機能をつけました。復習した日、復習した回数、正解率を自動で記録し確認できます。

App StoreGoogle Play