偏西風の3つの波

偏西風の波を平均する

上空で吹く風は等圧線(=等高度線)に沿って吹くという性質がありますので、等高度線が南北に波を打っているということは、偏西風も南北に波を打っていると考えることができます。

ここで重要なポイントは、天気図には日々変動する小さな波と、長期間にわたって存在する大きな波が重なって現れているということです。平均すると、小さな波や日々の変動の大きな波はすべて消えてしまい、大きな波や日々の変動の少ない波がそこに残るものです。

つまり、偏西風の3つの波の中で中小規模擾乱に伴う波や傾圧不安定波というのは日々の変動が大きく、またプラネタリー波に比べてスケールも小さいので、平均すると消えてしまい、よりスケールの大きく日々の変動の少ないプラネタリー波がそこに残るのです。ちなみにプラネタリー波は惑星規模に相当します。

プラネタリー波

プラネタリー波(惑星波)は、偏西風の3つの波の中で最も大きなスケールの波です。この波の波長(波の山から山、または谷から谷の長さ)は10000km以上であり、2〜3回ほど波を打ちながら地球を一周します。

プラネタリー波は停滞性の波であり、大規模山脈(アルプス・ヒマラヤ山脈など)や大陸と海洋の温度差などから発生します。南半球では大規模な山脈や大陸がほとんどないため、プラネタリー波ははっきりと確認できないのが特徴です。このことからも、プラネタリー波がいかに大規模山脈や大陸と海洋の温度差などの影響を受けて発生するかということが確認できます。

プラネタリー波は平均した天気図にはっきりと現れる波であり、日々の天気図では他の波と重なっているため見えにくいことがあります。

傾圧不安定波(長波)

傾圧不安定波(別名:長波)は、3つある偏西風の波の中でちょうど中間にあたる波です。

傾圧不安定波は、低緯度と高緯度の温度差がある限界を超えると、その状態に耐え切れずに発生します。つまり、低緯度と高緯度の温度差が大きくなると、この傾圧不安定波を南北に波打たせることによって低緯度の暖かい空気を高緯度へ送り、逆に高緯度の冷たい空気を低緯度に送ることにより、低緯度と高緯度の温度差を小さくしているのです。これを熱輸送といいます。つまり、偏西風の中でもこの傾圧不安定波が、その日々の熱輸送に最も大きく関係しているのです。

南北流型と東西流型

低緯度と高緯度の温度差がある限界を超えると、傾圧不安定波が南北に波を打つようになります。このように、傾圧不安定波が南北に波を打つような形のことを南北流型といいます。この波が高緯度から低緯度に向かうときに高緯度の冷たい空気を低緯度に運び、逆に低緯度から高緯度に向かうときに低緯度の暖かい空気を高緯度に運ぶわけです。

傾圧不安定波が南北に波を打つことによって、低緯度と高緯度の温度差がある程度解消されるようになると、この傾圧不安定波は南北に波を打たなくなり、どちらかといえば東西方向に流れるようになります。この形のことを東西流型といいます。そして、再び低緯度と高緯度の温度差が大きくなると傾圧不安定波を南北に波打たせて(南北流型)、温度差を小さくします。さらに、その温度差が小さくなると、また南北に波を打つのをやめる(東西流型)のです。

このように、傾圧不安定波が南北流型から東西流型に、または東西流型から南北流型と交互に変わることをインデックス・サイクルとよび、この周期は一般的に4〜6週間といわれています。

ブロッキング型

南北流型がさらに発達して波が深くなり過ぎると、南北の波の大きな流れから別に切り離された反時計回りと時計回りの渦ができ、その場所に低気圧と高気圧が発生します。これをブロッキング型といいます。

このとき、この南北の波の大きな流れから切り離された低気圧と高気圧は大きな流れから切り離されているため、その動きが遅く、ブロッキング低気圧ブロッキング高気圧といわれています。また、その低気圧のところでは高緯度から運ばれてきた寒気がたまりやすく、逆に高気圧のところでは低緯度から運ばれてきた暖気がたまりやすくなっています。

ブロッキングが発生すると、偏西風の流れが阻害(ブロック)されるため、天気のパターンが長期間変わらなくなり、異常天候の原因となることがあります。

傾圧不安定波の波長は3000〜5000km(総観規模)であり、波を打っている回数が少ないときは6回ほど、多いときには15回ぐらいと不規則に波を打ちながら地球を一周しています。また、この傾圧不安定波は1日に約1000kmほど東進するものであり、停滞性の波ではないことから、1日を期間とした天気図ならその波を確認することはできますが、プラネタリー波のときのような平均された天気図ではこの傾圧不安定波は消えてしまいます。

中小規模擾乱に伴う波

中小規模擾乱に伴う波は、3つある偏西風の波の中でも最も小さな波のことです。この中小規模擾乱に伴う波だけは、その波が小さすぎて天気図には一般的に表現できません。また、この波の波長は100km単位であり、水平スケールでいうとメソスケールにあたります。

水蒸気の南北輸送

偏西風の波動や大気の大循環に関連して、水蒸気の南北輸送についても触れておきます。

年平均で見た降雨量と海面や地表面からの蒸発量、そしてその両者の差の緯度分布を見ると、緯度30度付近、つまり亜熱帯高圧帯付近では降雨量より海面や地表面からの蒸発量のほうが大きいことがわかります。蒸発というのは水が水蒸気に変化することを表していますから、海面や地表面からの蒸発量のほうが大きいということは、そのままにしておくとこの地域ではその大気中に水蒸気が余分に存在してしまうことになるのです。

そのような理由から、緯度30度付近の余分な水蒸気は赤道付近、つまり熱帯収束帯に輸送されてそこでは積乱雲の雨となり、また緯度40〜50度付近の中緯度にも輸送されて、ここでは温帯低気圧の雨となるのです。そのため、この2つの地域では蒸発量よりも降雨量のほうが大きくなります。

このように、水蒸気の南北輸送は大気の大循環と密接に関係しており、地球全体の水の循環(水循環)を形成する重要な要素となっています。

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