絶対渦度保存則

絶対渦度保存則とは

前のセクションで、絶対渦度は相対渦度(ζ)と地球渦度(f)を足し合わせたものであることを学びました。ここでは、この絶対渦度に関する重要な保存則について考えていきます。

絶対渦度保存則とは、摩擦がなく収束・発散もない水平運動をしている空気塊では、絶対渦度が保存される(一定に保たれる)という法則です。

絶対渦度 = ζ + f = 一定

これは、空気塊が南北方向に移動するとき、地球渦度(f)が変化する分だけ相対渦度(ζ)が変化することを意味しています。空気塊が北に移動すると地球渦度fは大きくなるため、絶対渦度を一定に保つためには相対渦度ζは小さくなります。逆に、空気塊が南に移動するとfは小さくなるため、ζは大きくなります。

惑星渦度効果

絶対渦度保存則によって生じる相対渦度の変化を惑星渦度効果(ベータ効果)といいます。地球渦度が緯度によって変化すること(β=Δf/Δy)が原因で生じるため、この名前がついています。

具体的に考えてみましょう。もともと相対渦度が0の空気塊が北に移動したとします。北に行くほどfが大きくなるので、ζ+f=一定を満たすためにζは減少します。相対渦度が減少するということは、北半球では時計回り(高気圧性回転)の渦度が生じることを意味します。この時計回りの渦度によって、空気塊は南に押し戻される傾向があります。

同様に、空気塊が南に移動すると、fが小さくなるためζは増加します。つまり反時計回り(低気圧性回転)の渦度が生じ、空気塊は北に押し戻される傾向があります。

このように、空気塊が南北に移動すると、それを元の緯度に戻そうとする復元力がはたらきます。この復元力によって空気塊は南北に振動し、波動となって東西方向に伝播します。これがロスビー波(惑星波)です。

ロスビー波と偏西風の蛇行

ロスビー波は、偏西風の蛇行として観測される大規模な波動です。偏西風が南北に蛇行するのは、まさにこの絶対渦度保存則にもとづく惑星渦度効果の結果なのです。

偏西風の蛇行を順を追って見てみましょう。偏西風が何らかの理由で北向きにそれたとします。空気塊が北に移動するとfが増加するためζが減少し、時計回り(高気圧性)の渦度が生まれます。この高気圧性の渦度が風向を時計回りに曲げるため、風は南向きに転じます。

今度は空気塊が南向きに移動し、元の緯度を通り過ぎてさらに南に行くと、fが減少するためζが増加し、反時計回り(低気圧性)の渦度が生まれます。この低気圧性の渦度が風向を反時計回りに曲げるため、風は再び北向きに転じます。

このようにして、偏西風は南北に蛇行しながら東に進んでいきます。この蛇行の波がロスビー波であり、上空の気圧の谷(トラフ)と尾根(リッジ)のパターンを作り出しています。

ロスビー波の性質

ロスビー波にはいくつかの重要な性質があります。

ロスビー波の位相速度(波のパターンが移動する速度)は、一般に偏西風の平均風速よりも遅くなります。つまり、偏西風の中をロスビー波は西向きに(偏西風に対して逆向きに)伝播する性質をもっています。偏西風が十分に強ければ波は東に流されますが、偏西風の速度からロスビー波の伝播速度を引いた分だけ東に進むことになります。

波長が長い(南北の蛇行が大規模な)ロスビー波ほど西向きの伝播速度が大きく、場合によっては偏西風に逆らって西に進むこともあります。波長が短いロスビー波は偏西風に流されて東に進みやすくなります。

ある特定の波長のロスビー波では、西向きの伝播速度と偏西風の速度がちょうどつり合い、波がその場にとどまる(定在波になる)ことがあります。大規模な山脈や大陸と海洋の熱的なコントラストによって強制されるロスビー波は、この定在波的な性格をもつことがあり、偏西風の平均的な蛇行パターンを形成しています。

低気圧の渦の移動

絶対渦度保存則は、低気圧や高気圧の移動を理解するうえでも役立ちます。上空の偏西風の流れの中に乗っている低気圧(正の渦度をもつ擾乱)は、惑星渦度効果の影響を受けて移動します。

一般に、北半球の温帯低気圧は西から東に移動しますが、これは偏西風に流されるためです。同時に、惑星渦度効果によって低気圧は北西〜北に向かう成分ももつことがあります。低気圧の移動方向や発達のしかたを予測するためには、絶対渦度の変化を注意深く追跡することが重要です。

収束・発散と渦度を求める式のまとめ

ここで、収束・発散と渦度を求める式をまとめておきましょう。

水平発散量(ダイバージェンス):

D = ΔU/Δx + ΔV/Δy

D>0 のとき発散、D<0 のとき収束

相対渦度(ボルティシティ):

ζ = ΔV/Δx − ΔU/Δy

ζ>0 のとき正の渦度(低気圧性回転)、ζ<0 のとき負の渦度(高気圧性回転)

2つの式はよく似ていますが、発散量は風速成分の変化を「足す」のに対し、渦度は「引く」という違いがあります。また、発散量ではU成分のx方向の変化とV成分のy方向の変化を見るのに対し、渦度ではV成分のx方向の変化とU成分のy方向の変化(クロスした組み合わせ)を見るという違いもあります。この2つの量を正確に区別して理解することが大切です。

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