エマグラム
エマグラムとは
エマグラム(EMAGRAM)は、大気の状態を視覚的に把握するための図です。縦軸に気圧(上にいくほど低い=高い場所)、横軸に気温(右にいくほど高い)をとっています。
ある地点で観測された気温と露点温度をこの図にプロットすることで、大気の安定度や雲の発生する高さなど、さまざまな情報を読み取ることができます。
エマグラムの3種類の線
エマグラムには3種類の線が描かれています。
1. 乾燥断熱線
最も傾きが大きい実線です。空気が雲をつくらずに上昇・下降した場合、この線に沿って気温が変化します。傾きは100m上昇(下降)するごとに気温が1℃低下(上昇)することを表しています。
2. 湿潤断熱線
乾燥断熱線と等飽和混合比線のちょうど間の傾きを持つ、曲がった一点鎖線です。空気が雲をつくりながら上昇・下降した場合、この線に沿って気温が変化します。傾きは100mにつき約0.5℃の気温変化に対応しますが、実際には高度によって変化に幅があり、対流圏下層で100mにつき約0.4℃、対流圏中層で約0.6〜0.7℃の割合になります。対流圏上層では水蒸気が少なく気温も低いため、乾燥断熱変化の割合とほとんど変わらなくなります。このため、湿潤断熱線は直線ではなく曲線になっています。
3. 等飽和混合比線
最も傾きが小さい破線です。この線には混合比の値(g/kg)が記されており、図の右にいくほど値が大きくなります。気温が高い空気ほど多くの水蒸気を含むことができるため、気温が高い右側ほど飽和混合比の値も大きくなっています。
エマグラムで空気の状態を読む
エマグラムに気温と露点温度をプロットすると、等飽和混合比線を使って次のことが読み取れます。
- 気温の上を通る等飽和混合比線の値 → その空気が含むことのできる最大の水蒸気量(飽和混合比)
- 露点温度の上を通る等飽和混合比線の値 → 実際に含まれている水蒸気量(混合比)
たとえば、1000hPaで気温20℃の上を15g/kgの等飽和混合比線が通り、露点温度12℃の上を9g/kgの等飽和混合比線が通っていれば、その空気は最大15gの水蒸気を含めるのに対し実際には9g含んでいることになります。この場合の相対湿度は9÷15×100=**60%**です。
同じ気圧面で気温と露点温度が一致していれば、飽和混合比と混合比が同じ値になり、相対湿度100%(飽和状態)を意味します。
持ち上げ凝結高度(LCL)
地上(1000hPa)の空気塊を上昇させるとき、まだ飽和していなければ雲はつくらないので、気温は乾燥断熱線に沿って低下します。このとき、上昇しても空気中の水蒸気量(混合比)は変化しないため、露点温度は等飽和混合比線に沿って変化します。
乾燥断熱線に沿った気温の変化は、等飽和混合比線を大きい側から小さい側へ横切る方向に進みます。これは空気塊が上昇して気温が下がるにつれ、含むことのできる水蒸気量(飽和混合比)が減っていくことを意味しています。
やがて、この2つの線が交わる高さに達します。このとき、含むことのできる水蒸気量と実際に含んでいる水蒸気量が一致する、つまり飽和に達します。この高さを持ち上げ凝結高度(LCL: Lifting Condensation Level)といいます。
LCLはほぼ雲底高度に対応します。LCLより上では空気塊は飽和しているため、さらに上昇すると雲をつくりながら湿潤断熱線に沿って気温が低下していきます。
自由対流高度(LFC)
LCLより上で湿潤断熱線に沿って気温が低下していくと、あるところで実際に観測された気温曲線と交わります。この高さを自由対流高度(LFC: Level of Free Convection)といいます。
LFCより上では、空気塊の気温が周囲の大気の気温よりも高くなります。つまり空気塊は周囲より暖かく軽いため、浮力を受けて自力で上昇を続けられるようになります。
平衡高度
LFCを超えてさらに上昇を続けると、再び湿潤断熱線と観測された気温曲線が交わる高さに達します。これを平衡高度といいます。平衡高度はほぼ雲頂高度に対応します。
まとめ:雲のできる範囲
エマグラムから読み取れる雲の情報をまとめると:
| 高度 | 名称 | 意味 |
|---|---|---|
| LCL(持ち上げ凝結高度) | 雲底高度 | 空気塊が飽和に達し、雲ができ始める高さ |
| LFC(自由対流高度) | — | 空気塊が自力で上昇できるようになる高さ |
| 平衡高度 | 雲頂高度 | 空気塊の上昇が止まり、雲の頂上となる高さ |
つまり、1000hPaから上昇した空気塊はLCL(雲底)から平衡高度(雲頂)までの範囲で雲をつくることになります。
