3つの安定・不安定
同じ高さで比べるのが大原則
前のセクションで、大気の安定・不安定を判断するには同じ高さで気温を比べる必要があると学びました。ここでは具体的な数値例を使って、3つの状態を見ていきます。
判定に使うのは、乾燥断熱減率(Γd:100mにつき約1℃)と湿潤断熱減率(Γm:100mにつき約0.5℃)の2つです。地上の空気を上空まで持ち上げたとき、「雲をつくらない場合(乾燥断熱変化)」と「雲をつくる場合(湿潤断熱変化)」の2パターンで考えます。
絶対安定
地上(0m)に30℃、上空1kmに27℃の空気があるとします。
地上の空気を1kmまで持ち上げると:
| パターン | 減率 | 持ち上げた空気の温度 | 上空の空気 | 結果 |
|---|---|---|---|---|
| 雲なし(乾燥断熱変化) | 1km上昇で10℃低下 | 30−10=20℃ | 27℃ | 持ち上げた方が冷たい → 安定 |
| 雲あり(湿潤断熱変化) | 1km上昇で5℃低下 | 30−5=25℃ | 27℃ | 持ち上げた方が冷たい → 安定 |
雲をつくってもつくらなくても、持ち上げた空気の方が冷たい(=重い)ので、空気は上昇を続けられません。この状態を絶対安定といいます。
条件付不安定
地上(0m)に30℃、上空1kmに23℃の空気があるとします。
| パターン | 減率 | 持ち上げた空気の温度 | 上空の空気 | 結果 |
|---|---|---|---|---|
| 雲なし(乾燥断熱変化) | 1km上昇で10℃低下 | 30−10=20℃ | 23℃ | 持ち上げた方が冷たい → 安定 |
| 雲あり(湿潤断熱変化) | 1km上昇で5℃低下 | 30−5=25℃ | 23℃ | 持ち上げた方が暖かい → 不安定 |
乾燥断熱変化なら安定ですが、湿潤断熱変化なら不安定になります。つまり、雲ができるかどうか(空気が飽和するかどうか)という条件によって結果が変わります。この状態を条件付不安定といいます。
絶対不安定
地上(0m)に30℃、上空1kmに15℃の空気があるとします。
| パターン | 減率 | 持ち上げた空気の温度 | 上空の空気 | 結果 |
|---|---|---|---|---|
| 雲なし(乾燥断熱変化) | 1km上昇で10℃低下 | 30−10=20℃ | 15℃ | 持ち上げた方が暖かい → 不安定 |
| 雲あり(湿潤断熱変化) | 1km上昇で5℃低下 | 30−5=25℃ | 15℃ | 持ち上げた方が暖かい → 不安定 |
雲をつくってもつくらなくても、持ち上げた空気の方が暖かい(=軽い)ので、空気はどんどん上昇し続けます。この状態を絶対不安定といいます。
判定のまとめ:2地点間の気温差がカギ
3つの状態を分けるのは、鉛直方向の2地点間の気温差(気温減率)です。
- 気温差が湿潤断熱変化の割合(100mにつき約0.5℃)より小さい → 絶対安定
- 気温差が湿潤断熱変化と乾燥断熱変化の間 → 条件付不安定
- 気温差が乾燥断熱変化の割合(100mにつき約1℃)より大きい → 絶対不安定
つまり、2地点間の気温差が大きいほど大気は不安定になります。気温減率をΓとすると:
Γ < Γm → 絶対安定
Γm ≤ Γ ≤ Γd → 条件付不安定
Γd < Γ → 絶対不安定
なお、気温差が湿潤断熱変化とちょうど同じ場合は「湿潤中立」、乾燥断熱変化と同じ場合は「乾燥中立」の成層状態となります。
